校長室より

【校長室】読書のススメ(1学年POP展示)

 四季折々の気候の変化や、祭りやイベントなどの季節に応じた様々な活動を楽しむことができることが我が国の大きな魅力であることは、皆さんも感じていることと思います。

 しかし今年は、観測史上最も暑い夏と言われ、本来快適で過ごしやすく最も行楽に向いているとされる「秋」が訪れたと思ったら、アッという間に気温が下がり、冬の訪れを感じずにはいられない状況となり、日本の大切な魅力が無くなってしまうのではという危機感を感じました。

 本来「秋」は何をするのにも適切な時期であることから、「食欲の秋」「スポーツの秋」「味覚の秋」「芸術の秋」などと言われますが、こと学問的に考えると「読書の秋」も見過ごせないワードの一つです。こうした気候の良い時期に、時間を確保して、じっくりと読書に耽るのも、我が国ならではの文化なのではないでしょうか。

 近年デジタル書籍が普及し、紙の本を手にする機会が急激に減少する中、本校1年生は、紙を媒体とした現代の文学作品と向き合い、「本」を読むことから得られる学びを大切にし、読書への志向を高めるために、夏季休業中に1冊の文庫本を読み、自分が感じたその本の魅力を他者に伝えるための「POP」の制作に挑戦しました。

 「POP」とは「Point of purchase advertising」を略したもので、「ポップ」あるいは「ピーオーピー」と呼ばれ、紙や布、ボードなどに名称や価格、セールスポイントや説明文などを記して陳列された品物の魅力を伝えるもので、私たちも、日常生活で立ち寄るスーパーや飲食店などで良く目にする広報媒体のことを示します。

 POPは、単に品物の情報を伝えるのではなく、いかに消費者や利用者の目を引き、その品物への興味を掻き立てられるかを目的とするもので、品物の魅力を端的かつインパクトのある表現で伝え、購買意欲や利用意欲を高める効果が求められます。

 生徒たちは、それぞれ興味のある本を1冊選び、じっくりとその内容を鑑賞したのちに、どんなPOPを作れば自分が感じたその本の魅力を他の生徒と共有し手に取ってもらえるのかを工夫し、A5版という限られた紙面に表現しました。

 それぞれが作成したPOPは、9月にクラス内で生徒同士による予備審査が行われ、その後、優秀な作品が生徒昇降口の掲示板に展示され、1学年の生徒全員の投票による最終審査が行われました。

 展示された作品は、どれも丁寧に描かれ、それぞれに個性があり、同じ本をテーマとしたPOPでも全く違う雰囲気の作品に仕上がっていました。また、色遣いや挿絵の構図、フォントの形状や大きさなどに拘りがあり、個性的なインパクトを放つとともに上手にその本の魅力をアピールするものばかりで、私自身も「この本はどんな本なんだろう」と興味を掻き立てられました。

 10月中旬には審査結果がまとまり、最優秀賞に「姜尚中と読む夏目漱石(姜尚中)」のPOPを作成した1年1組の久保田絢香さん、優秀賞には「女の子はどう生きるか、教えて上野先生!(上野千鶴子)」のPOPを作成した1年1組の阿部莉音さん、学年主任賞には「『お客様』がやかましい(森真一)」のPOPを作成した1年2組の島崎実穂さんが選ばれました。また、私が最も興味を惹かれた作品として1年7組の柴良枝さんの作品「その情報、本当ですか?(塚田祐之)」に校長賞を贈りました。

 生徒たちが作成したPOPは、現在それぞれのテーマとなった本とともに図書室に展示されています。2学期末までの展示期間となっていますので、1年生だけでなく上級生を含めた多くの生徒たちに見に行ってほしいと思います。

 また、こうしたPOPの作成や、展示作品の見学をきっかけに29,900冊の蔵書を誇る図書室に足を運び、自分の趣味や趣向にあった本を探してみてはいかがでしょうか?

 もしかしたら、偶然手に取った1冊には、皆さんのこの先の人生に大きく影響するような刺激的なことが書かれているかもしれません。