校長室より

進化した越南サウンド(吹奏楽部定期演奏会)

 本日5月5日(月)越谷サンシティホールにて本校吹奏楽部による第39回定期演奏会が開催されました。

 この定期演奏会は、部員たちのご家族の皆さまや様々な形で本校をご支援いただいている皆さまに対して感謝の意を込めて日頃の鍛錬の成果を披露する演奏会で、ご来場いただく皆さまに存分に楽しんでいただけるよう、12月に開催したウィンターコンサート以降、大会の合間を縫って実行委員長を中心に企画の熟考を重ねてきたものです。

 また、越南サウンドに憧れて新たに入部した37名の1年生を加え、3学年総勢118名が揃って開催する初めての演奏会で、夏の吹奏楽コンクールに向けてのスタートとなる大切な節目でもあります。

 更に、今年度からの新たな取組として、地域の子どもたちに気軽に音楽に触れて楽しんでいただくために、通常の定期演奏会とは別に、これまでリハーサルに当てていた午前中の時間を活用して未就学児や小学生でも聴いて踊って楽しめる音楽を中心としたファミリーコンサートを併催しました。多くのお子様連れの方々にご来場いただき、賑やかにお楽しみいただくとともに、部員たちもチビッコたちからたくさんの笑顔とエネルギーを受けて、改めて音楽の楽しさを実感したようでした。

 午後から開催された定期演奏会では、1,600名の座席数を誇る同ホールがご家族の皆さまやご支援いただいている関係の方々、本校生徒を含む多くの中高生たちにご来場いただいたおかげで2階席まで満席となり、これ以上ない最高の舞台が整いました。

 今回の演奏会は3部構成となっており、第1部が2,3年生全員による本年度のコンクール課題曲を含むクラシックステージ、第2部は同様に本年度コンクール課題曲を含むクラシックに1年生のデビューステージやゲーム音楽を混じえたリズミカルで楽しめるステージ、そして第3部が会場を一つにして盛り上がるポップスステージとなっています。

 定刻の午後2時30分にトランペットとトロンボーンのファンファーレとともに第1部のクラシックステージが開演し、最初の楽曲「アルセナール」が演奏されました。僅か3分という短い楽曲ですが、会場の雰囲気を一変させ、聴く者の耳を一気にひきつけるプロローグでした。 

 続く2曲目では、本年度夏のコンクールの課題曲の一つ「祝い酒と踊り唄による幻想曲」で、本年度着任した副顧問が指揮を振り、祭りの賑やかさを想像させる「和」テイストの楽曲を披露しました。

 3曲目は誰もが知る交響組曲「ハリー・ポッター(賢者の石)」を別の副顧問の指揮により演奏しました。映画で良く耳にするサウンドだけでなく、組曲として幽艷なサウンドから壮大な空間を思わせるスケールの大きい楽曲で、様々な楽器が力強くハーモニーを奏でる没入感の強い演奏となりました。

 第1部最後の楽曲は再び主顧問がタクトを振り、J.バーンズ作曲の「交響曲第3番より第三章、第四章」を演奏しました。この曲は、4部構成となっており、その内の後半2章16分間のロングステージで、鉄琴を弦でひいたり複数のソロパートが見られたり、かと思えば力強く迫力満点の場面があったりと変化の激しい聴きどころ満載の楽曲となりました。

 15分間の休憩を挟んで始まった第2部は、ニューフェイスの1年生37名がオレンジ色の揃いのTシャツを着てステージに上りました。司会の2年生がインタビューをすると緊張感MAXで上手く言葉が出てこないシーンもあり、初々しさを感じました。1年生のデビューステージに用意された楽曲は、越南吹部最初の登竜門「100%勇気」です。ステージに立った1年生の中には、高校生になって初めて楽器を持った部員も複数いましたが、僅か1ヶ月の間の猛特訓の成果が実を結び、素人がいるとは全く感じられない4分間の立派なステージとなりました。

 2曲目は本年度のコンクール課題曲Ⅲ、マーチ「メモリーズ・リフレイン」で、行進曲の名のとおり、リズミカルで明るいサウンドから始まり、トランペットやトロンボーンが際立つ場面もあるなど、軽快で聴き心地の良い演奏となりました。

 3曲目は、子どもから大人まで誰もが知っているゲームのテーマ曲、ドラゴンクエストⅢの組曲で、おなじみのサウンドから始まり、リズムや雰囲気の異なる7つの曲を組み合わせた25分間の超大作となりました。曲が進むにつれて荘厳さや疾走感が高まり、最後は広大な大地を旅しているかのような壮大な空間を思い浮かべる重みと深みのあるサウンドで、最初に感じたゲーム音楽の楽しさから自然と奥深い世界観に引き込まれてしまいました。

 再び15分間の休憩を挟んで、いよいよお楽しみの第3部ポップスステージの始まりです。今年のポップスステージは、これまで以上に様々な工夫と見どころが散りばめられていました。生徒指揮者がタクトを振り、気が付くと主顧問が生徒に混じって最後列に陣取りトランペットパートに加わって演奏していました。驚きとともに始まったステージのテーマは越南吹部伝統のキャラクターであるシンフォニー戦隊ビートファイターの誕生秘話で、AI技術の進化が加速して音楽が存在しない1,000年後の未来から偶然2025年の現代にタイムスリップしてやってきた4人の幼馴染が、音楽によって幸せになることを嫌う女王様とその一味によって大切な音楽を消されそうになる越南吹部のピンチに出くわし、女王様一味を倒すために正義の味方シンフォニー戦隊ビートファイターとなって闘うというストーリーで、キャストたちの言動とともに様々な音楽が演奏されたり、音楽に乗ってキャストが踊ったりと、さながらミュージカルを見ているかのように錯覚してしまいそうでした。

 登場するキャストたちもそれぞれ個性的で、アイドルソングとともに登場した3人組は、まるでアイドルコンサートのようにフリフリ衣装を纏ってキュートな笑顔と踊りで会場を盛り上げました。中でも「音消し」の術で越南吹部の活動を邪魔する女王様と子分の演技と掛け合いは秀逸で、悪役になりきってピンチを演出し、その大ピンチからビートファイターが誕生して越南吹部と音楽を救うというハッピーエンドのストーリーも、よく考えられた作品だと本当に感心しました。

 エンディングでは、118人の部員を代表して部長の挨拶があり、ご家族やご支援をいただく関係の皆さまに対する感謝の意と自分たちが目指す「最高の音楽」に対する熱い思いを語りました。

 その後、部員全員が自分の体の一部である楽器を置いて美しい声によりハーモニーを奏でる大合唱、そしてラストは十八番の「宝島」でステージと会場が一体となって盛り上がったところでフィナーレを迎えました。

 今の御時世、限られた活動時間の中で、演奏の練習だけでも精一杯のはずなのに、毎日のインスタ配信に加えて、こうした台本や演出を企画し、小道具や衣装を準備したり、ましてたくさんの踊りを覚えて合わせたりと、いつやっているのだろうかと考えてしまうほど大変だったに違いありません。時には、上手くいかなくてストレスを抱えたこともあるはずです。

 しかし、吹奏楽部の皆さんは、素晴らしいホスピタリティを発揮し、いつも最終的にそうした壁を乗り越えて最高の音楽とともに最高のステージにしてしまうのだから、その順応性と情熱は本当に素晴らしいものだと感じます。

 そんな吹奏楽部のみなさんだからこそ、幾多の困難を乗り越えて吹奏楽強豪校として君臨し、「全国」というワードに本気で口にし、そしてチャレンジできるのだと思います。

 これから夏のコンクールに向けて吹奏楽部の皆さんにとって1年間の集大成となる大切な時期を迎えます。普段から音楽に没頭し音楽に青春を捧げている皆さんなら、少し先に見え隠れする「全国」の舞台に今年こそ立てるはずだと信じています。焦らず地道に、そして着実に前進し、真夏のステージに向かってほしいと願います。皆さんなら必ずできると信じています。

 本日は、たくさんの保護者の皆さま、ご家族の皆さま、そしてご支援をいただいいている関係各所の皆さまにご来場を賜り、心より感謝申し上げます。部員たちは、皆さまの温かなご支援のお陰で大好きな音楽に没頭し、夢の実現に向かうことができています。今年の夏は、必ずや皆さまとともに夢を実現する部員たちの姿が見られることを楽しみにしたいと思います。今後とも、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 頑張れ、越南生!頑張れ、吹奏楽部!