校長室より

チームの成長に裏付けられた勝利(サッカー部インターハイ地区予選)

 本日5月4日(日)宮代高校にて全国高等学校総合体育大会埼玉県東部支部予選の2回戦が開催され、本校サッカー部が出場しました。

 この大会は、7月26日(土)から1週間にわたり福島県のJヴィレッジほかで行われる全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)の埼玉県代表を決める大会の支部予選で、東部地区からは5チームが県大会の切符を手にし、県大会を制したチームにインターハイの出場権が与えられるレギュレーションとなっています。

 本校は1月に行われた東部支部の新人戦で見事3位となりましたが、抽選により、その試合で死闘を演じ、同点引き分けで両校3位となった三郷北高校と同じブロックとなりました。

 本日の対戦相手は蓮田松韻高校との1回戦を7-0の大差で勝ち上がってきた宮代高校で、相手はプレーし慣れた自校で戦えるアドバンテージがある中、相手校のホームに乗り込んでの戦いとなりました。宮代高校は東部地区北部の田畑の多い地域に立地していますが、駅からわずか徒歩8分のアクセスの良さから代々部活動が盛んな学校で、毎年ポテンシャルの高い選手が数人在籍する侮れないチームです。

 試合は予定どおり午前10時ちょうどに相手のキックオフで始まりました。開始早々から、相手はトップギアでボールに対して直線的なアプローチを仕掛け、ファーストコントロールでボールを落ち着かせられない本校選手との間で球際の激しい攻防が繰り広げられました。また、相手はポゼッションするよりワンタッチで縦に大きく蹴りだし、キック&ラッシュの戦術を優先するため、繋ごうとする本校の僅かなミスも容赦なく蹴り出され、なかなか敵陣深く攻め込むことができない状況が続きました。

 試合前に監督から中央突破で直線的にゴールに向かうのではなく、相手をいなしてサイドを有効に使うよう指示が出ていた中、前半14分にビッグチャンスが訪れます。ミドルゾーン中央から左サイドに展開した本校は、1年生アタッカーが縦に仕掛け、早めのタイミングでクロスを上げると、ファーサイドに走り込んだエースストライカーがドンピシャでヘディングを合わせ、待望の先制点を奪いました。

 このストライカーは、決してテクニックに秀でたプレーが多いわけではありませんが、攻守にわたりスプリントを繰り返す献身的な姿勢と身体を張った泥臭いプレー、そしてチームを鼓舞する強烈なキャプテンシーが身上で、どんな試合でも計算以上の活躍が期待できる堅実性が持ち味であり、かつての日本代表岡崎慎司選手を彷彿させるチームで最も頼れる唯一無二のストライカーです。

 このゴールで一気に「南の風」を掴んだ本校は、縦に急ぐ相手に苦しみながらも手を緩めることなく敵陣に攻め込み、前半20分に再びビッグチャンスを迎えます。ミドルゾーン右からゴール前に放り込んだ縦パスをペナルティエリア中央で相手ディフェンダーとヘディングで競り合うと、こぼれたセカンドボールの落下点に待っていたのは、またしても本校エースストライカー。これを再びヘディングでゴールに叩き込み、追加点を奪取しました。

 ここから更に本校が攻勢を仕掛け、敵陣内でプレーする時間が長くなりました。両軍とも球際の攻防は激しいものの、縦に急ぎすぎるゲーム展開から大味なサッカーになる中、本校は少しずつスペースを意識したサイドアタックが見られ始め、迎えた前半35分にはアタッキングサードに入れた縦パスからボールを繋いで右サイドに展開し、ドリブルでゴールライン際まで深くえぐる理想的な攻撃から、最後はマイナス気味のセンタリングにヘディングで飛び込んだのは三度頼れるストライカー。ゴール正面から豪快にヘディングでたたき込み、前半だけでハットトリックを達成する快挙を成し遂げました。

 一発逆転のないサッカーでは、俗に3点差がセイフティリードと言われますが、3点のビハインドでも全く落ち込む様子もなく変らず全力でプレーする相手は、高校生らしく素晴らしいチームだと感じていましたが、続く前半39分には次なるチャンスが訪れます。ペナルティエリア内に放り込まれたボールをクリアしようと敵味方が混戦となる中、こぼれたボールを拾って右足を一閃したのは本校のトップ下に君臨するボールコントロールに秀でたゲームメーカー。振り抜いた足から放たれたシュートはゴール右に吸い込まれ、豪快にネットを揺らしました。直後に前半終了のホイッスルが吹かれ、4-0のリードを奪って折り返しを迎えることとなりました。

 ハーフタイムには、監督やコーチから称賛される場面もありましたが、高みを目指す本校は、点を重ねながらもビルドアップの点で克服できていない課題の指摘を受け、気を引き締め直して後半のピッチに飛び出していきました。

 試合開始直後から容赦なく太陽が照り付け、気温が上がる中、選手の消耗状況を勘案して、後半は飲水タイムが設けられることとなり、真夏の大会に向けたトーナメントにふさわしく消耗戦になる予感がしました。

 点差は4点ながら、相手守備網を崩し切って奪った得点は3点目の1点だけであったことに加え、相手は点差を気にせず愚直にプレーする好チーム。しかも攻撃陣のポテンシャルは決して低くなく、一瞬でも気を抜けば突破を許してしまうであろうリスクは試合開始直後と変わらない状況で後半がスタートしました。

 後半開始直後の50分、自陣左サイドでファールを受けた本校サイドバックが、クイックスタートでGK(ゴールキーパー)に横パスし、GKがコントロールをもたつく間に相手2人の攻撃陣に囲まれてゴール左30m付近でボールを失うと、こぼれ球を無人のゴールに向かってシュートされ、ボールは一直線に本校のゴールに。誰もが「やられた」と思ったその瞬間、僅かにゴールポスト右側にボールが反れ、幸運にも絶体絶命の大ピンチを切り抜けることができました。ここから一気に勢い付き攻勢を強める相手に対して、本校は受け身に回ったプレーが目立ち、相手に押し込まれる時間が長くなりました。

 更なる追加点を奪って試合を決定づけたい本校は、後半開始10分が経ったところで膠着状態を打破するための2枚替えに踏み切りました。

 フレッシュな2人を加えた本校は、前半の課題であったワンタッチの展開とサイドのスペースの活用を意識しますが、球際に厳しい相手のプレッシャーを上手くいなせない中、時間ばかりが過ぎ、アップダウンの激しい展開に徐々に消耗が激しくなってきました。

 後半も半分以上が過ぎたころ、本校は大活躍だったエースストライカーなど先発の2人に代えて更にフレッシュな2人を投入し、運動量を確保した局面の打開を図りますが、少しずつサイドアタックを意識した展開が増えるものの、ファーストコントロールが落ち着かずにボールを失う場面が連続し、効果的な攻撃に転じることができません。

 残り5分余りとなったところで、勝利を確信した本校は、チームの心臓ともいえるゲームメーカーをお役御免とし、更にフレッシュなメンバーを追加して、攻撃のギアを上げようと試みました。しかし単発のチャンスは作るものの、相手チームも全く集中力を切らさず、後半だけ見れば、どちらが勝っているチームかわからないような時間が過ぎていきました。

 後半途中でハイボールの競り合いの場面で相手選手が痛み、ゲームが止まったことから5分間のアディショナルタイム(追加時間)が設定されました。暑さに両軍とも激しい消耗の中、集中を切らさずに戦い続け、相互に何度かチャンスを迎えたものの、ゴールに結びつけることができずにタイムアップのホイッスルを聴きました。

 終わってみれば4-0の完勝ともいうべき結果ですが、後半は押し込まれる時間が長く、選手たちは勝った気がしない幕切れとなりました。それでも本校選手たちは、相手以上に集中力を高く保ち、苦しい展開が続く時間もチーム全体でボールにアプローチして無失点に抑えて勝利に繋げたことは高く評価できる収穫であったと思います。

 また、新戦力として1年生3人がスターティングメンバーに名を連ねたことや、エースストライカーが確実にチャンスを得点に繋げたこと、10番を背負うゲームメーカーは、ヘディングの際のジャンプのタイミングを掴んだようで、小柄ながらも高い打点で競り勝つ場面が多く見られたこと、ベンチ外となった部員たちの一体感のある素晴らしい応援など、少しずつ自信とともに成長が感じられ、多くの課題はあるものの、強豪チームへの階段を登り始めた兆しの感じられるゲームとなりました。特に羞恥心を乗り越えて、大きな声を張り上げて盛り上げる応援団もピッチと同じように戦っているようで、そのおかげで選手たちは力強い「南の風」を感じることができたのではないでしょうか。

 次戦は、県大会への切符を賭けて明後日5月6日(火)、三郷市のセナリオハウスフィールドで行われる地区代表決定戦に臨むこととなります。相手は本日の試合を5-0で完封勝利した因縁の三郷北高校となります。新人戦の3位決定戦の再戦となり、決着を付けるためにも敗けられない試合となります。

 本校部員たちには、本日素晴らしい応援を見せてくれた部員たちや、いつも献身的に選手をサポートしてくれているマネージャー、そして毎回応援に駆けつけてくださる保護者やOBの皆さまの想いを背負って、必ずや県大会の切符を手にしてほしいと願います。日頃から地道に努力を積み重ねている皆さんなら、必ず成し遂げられると信じています。

 本日も多数の保護者の皆さまにご来場いただき、ご声援を賜りましたことに、心から感謝申し上げます。こうしてご家族の皆さまにご声援をいただけることが、部活動として本物となっていく必須条件であると感じています。後半は難しい展開となりましたが、本日の勝利は、ご家庭でのご理解とご支援のおかげであると感じています。今後とも、変らぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 頑張れ、越南生!頑張れ、サッカー部!