【校長室】「Last Olive」に込めた3年生の想い(衣替えの儀)
本校では、近年の気候変動を考慮して制服移行期間1ヵ月を含むものの、基本的には9月30日(月)をもって衣替えとなり、10月1日(火)から多くの生徒たちは夏場に着用した越南伝統のOlive カラーの制服を脱ぎ、紺色の冬服を身に纏って登校してきます。
衣替えは、四季折々の季節によって気候が大きく変化する我が国の特徴的な文化で、古くは平安時代の宮中行事から始まったとされています。当時の衣替えの時期は旧暦の4月1日と10月1日とされていましたが、明治時代に政府が役人などの制服を定め、夏服を6月1日から9月30日まで着用することと制定したことから、以降広く一般的に6月1日と10月1日が衣替えの時期とされ、制服を導入した現在の教育現場でも運用されています。
教育の現場では、衣替えに関わらず、日本古来の季節行事や農産物など、四季折々の歴史や文化を身近に感じる教育活動はとても重要であり、日本人の持つ心の豊かさもこうした教育活動によるところが大きいと感じています。
一方で近年、地球温暖化が進み、夏は体温を超える酷暑の日々が、冬は氷点下の極寒の日々が多くなるとともに、豪雨や突風、竜巻や自然火災などが多発するなど、異常な気象状況が年々拡大しています。私が高校生の頃と比べると単純に5度以上平均気温が上昇しており、生徒たちが親となり老後を迎える時代には、どのような生活が強いられるのか本当に心配でなりません。
そうした中、本校生徒たちも衣替えの時期を迎え、10月1日より紺色の冬服にチェンジした姿で学校生活を送ることになります。本校の制服は夏服・冬服ともに日本を代表するデザイナーである森英恵氏のデザインによるもので、特に夏服は純白とOliveカラーを採用していることで、良くも悪くも一目で本校の生徒と分かる特徴ある制服となっています。
生徒からすると、このOliveカラーの制服には賛否両論があるようですが、確かに見た目のインパクトは大きいものの、全校生徒が着用しているのを日常的に見ていると、男子はとても爽やかに、女子はとてもキュートに見えることから、大人の感覚としてはとても素敵な制服であると認識しています。
生徒たちも、初めてOliveカラーの制服に袖を通すときは戸惑いがあるようですが、みんなで着ているうちにだんだんと愛着がわくようで、女子のセーラーの襟部分にあしらわれた格子柄を「メロンパン」などと称して楽しんでいるようです。
そんな生徒たちの中でも3年生にとっては、この衣替えで3年間着用した夏服を着ることが最後となり、複雑な思いに駆られているようです。3年生界隈では一部の女子生徒を中心に「Last Olive」なる言葉が飛び交い、Oliveカラーの制服を着ることが最後となったことに対して寂しい気持ちを表現しているようです。
制服に限らず、生徒たちが自分の母校の様々なアイテムに誇りや愛着を持つことはとても重要なことであり、言い換えれば自分自身の学校生活に対してポジティブな想いを持っている証であると考えています。
はじめは戸惑いのあったOliveカラーも、やがては当たり前となり、そして失うことへの寂しさを感じる。まさに制服を含めた自身の3年間の歩みを肯定できた結果であるのではないでしょうか。そうした意味では、本校での教育活動が皆さんにとって有意義なものであったということであり、皆さんに寄り添ってきた我々教職員にとっては、何より嬉しいことでもあります。
先日イオンレイクタウンで行った吹奏楽部のイベントで、たまたま私の横に立った女性が本校の卒業生だったらしく、部員たちがOliveカラーの制服で演奏する姿を見て「懐かしい~、私も着てた~」と喜んでいたのを思い出しました。皆さんも、やがてきっと、そんな日がやってくるのだと思います。
3年生にとっては、もうOliveカラーの制服を纏って登校することはなくなりますが、皆さんには、まだ卒業まであと半年間の高校生活が残っています。現在は「なりたい自分」を実現するための最終章を迎え、楽しいことよりも大変なことの方が多い時期ではあると思いますが、そうした中でも、ともに過ごし友情を育んできた仲間たちとの関係を大切にし、卒業してからも本校での高校生活を「大切な記憶」と思えるよう、日々噛みしめながら過ごしてほしいと願います。
大丈夫、皆さんなら「なりたい自分」を実現し、次のステップで、また新たな喜びや楽しみを手にすることができると信じています。
頑張れ、越南生!頑張れ、3年生!