校長室より

雨中の激闘に散る(サッカー部インターハイ地区代表決定戦)

 本日5月6日(火)三郷市のセナリオハウスフィールドにて全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)埼玉県東部支部代表決定戦が開催され、本校サッカー部が出場しました。

 この大会はインターハ予選の県大会に出場する支部代表を決定する大会で、東部支部からは5チームが県大会の切符を手にするレギュレーションとなっています。

 本日は1月に行われた東部支部新人戦3位決定戦で同じく雨の中死闘を演じ3位を分け合った宿敵三郷北高校との再戦となりました。

 三郷北高校は、地元三郷市近辺を拠点とする複数の強豪クラブチームとの連携が深く、過去には県3位入賞という輝かしい実績を持つチームで、毎年ポテンシャルの高い選手が多数在籍する東部地区有数のテクニカルなチームです。

 本日は、天気予報どおり朝から冷たい雨が降り、底冷えするようなあいにくの気候となりましたが、本日の会場は、地盤の固さが気になるものの奇麗な人工芝が敷き詰められたピッチで、雨によるスリッピーな点を除けば全く問題なくプレーできる環境でした。近年は、こうして人工芝ピッチが普及し、多くの公式戦が芝のピッチで戦えるようになり、Jリーグ百年構想のとおり、技術の進歩とサッカーの普及を強く感じられる時代となりました。

 試合は予定どおり午前10時ちょうどに本校のキックオフで始まりました。実際に試合が始まってみると、相手選手たちの技術スキルはかなり高く、ワンタッチのコントロールや次のプレーを意識したボディーアングル、ボールインパクトの強さなどに加え、ボディーサイズも一回り大きくフィジカルな面でも相手が数段上回っており、専門的な目線で客観的に見れば大きな差を感じざるを得ない状況でした。

 対して本校は、フィジカルやボールコントロールでは及ばないものの、高い集中力と献身的なチームカラー、泥臭く闘う粘り強さやチームの一体感では相手を大きく上回っており、こうしたスポーツに最も重要な本質の部分ではどのチームにも負けない素晴らしいスキルを持っているのが本校最大の強みとなっています。大きく点が動くスポーツではないサッカーにおいては、柔道の「柔よく剛を制す」のとおり、往々にして技術の差を凌駕してメンタルの充実したチームが勝利を手にすることがあることも事実です。

 試合は、開始直後からボールを支配されて劣勢が続く中、前半5分にはボールを繋がれ左45度から強烈なミドルシュートを浴びましたが、ボールはゴール右ポストをかすめて事なきを得ます。

 本校も徐々に相手のスピードやタッチに慣れてきてボールを跳ね返すことができ始め、前半9分には右サイドでワンツーから抜け出しクロスを入れるビッグチャンスを作ります。直後の10分にはバイタルエリア中央でボールを拾った本校選手が右足を一閃、目の覚めるようなミドルを放ちますが相手GKのスーパーセーブでゴールネットを揺らすことができません。

 これを機に徐々に本校がリズムを握り、前半15分には再びビッグチャンスが訪れます。左サイドでボールを受けた本校ストライカーが中央に走り込んだゲームメーカーに見事なパスを通し、ゴール正面から強烈なシュートを放つも枠を捉えきれません。

 前半20分には左スローインから2本の横パスを繋いで角度のないところからループシュートを放つも僅かにクロスバーを越えてしまいました。

 とどめは右ミドルゾーンで得たフリーキックを右サイドに展開し、奇麗な弧を描くクロスボールにストライカーがヘディングで飛び込むも、無情にもボールはクロスバーの上を超えてしまいました。約20分にわたり本校が怒涛の波状攻撃を仕掛け、完全にゲームを掌握しながら幾度となくビッグチャンスを迎えましたが、あと一歩のところで得点に結びつけられない展開が続きます。

 すると前半残り10分を切ったところで試合の流れが変わります。相手は縦へのフィードパスを受けた選手が前を向き、本校センターバックとサイドバックの間に走り込むトップの選手に絶妙なスルーパスを送ります。本校GKが果敢に飛び出しセーブするも、そこに飛び込んできた相手選手と交錯し顔面を強打します。倒れ込んだGKに会場内は騒然としましたが、本校GKは気力で立ち上がり、プレーを続けます。

 続く35分にはミドルゾーンで本校が与えた左フリーキックがクロス気味にゴール前にボールが入りピンチを迎えますが、本校GKが勇気を持ったパンチングで凌ぎます。更に前半アディショナルタイム(40+1)には右サイドを突破されてゴール前に入れられたセンタリングを本校GKがはじいたところを詰められて強烈なシュートを打たれますが、本校守備陣が体を張ってCK(コーナーキック)に逃れます。

 立て続けにピンチを迎えたタイミングで与えたセットプレー、そしてアディショナルタイムも僅か。前半ラストプレーになるであろうCKに胸騒ぎがしましたが、案の定左CKがGKの頭上を越えてフォーポストまで深く入り、ポスト際に飛び込んだ相手選手にヘディングで押し込まれ、痛恨の先制点を許してしまいました。前半の多くの時間をゲームプランどおり優位に進めていた本校にとって、まさに一瞬の悪夢で、悔やまれる失点となりました。その後キックオフとともに前半が終了し、なんとももったいない展開となりました。

 ベンチに引き上げてきた選手たちは一様に悔しさを見せていましたが、全く心は折れていませんでした。むしろ追いかける立場となったことで、前半以上にアドレナリンが出ているようで、監督からの分析と指示を冷静にインプットしたのち、気合十分でピッチに飛び出していきました。

 後半開始とともに前線を1人替えた本校は、開始直後から相手に襲い掛かります。前線や中盤の選手が激しいプレスをかけボールを奪いますが、相手のプレッシャーも厳しくスペースへの展開には至りません。そうした中、後半10分に左CKを得ますがゴール正面で合わせたヘディングは枠の外へはずれます。

 相手は後半17分、本校ゴール前でディフェンダーがクリアをもたついている間に2人でプレスをかけ、こぼれ球から強烈なシュートを打たれます。誰もが完全にやられたと思いましたが、幸運にもボールはクロスバーを越えて事なきを得ました。

 対する本校は後半18分にスローインからショートパスを2本繋いで中央からシュートを放ちますが相手ディフェンダーに当たってしまいます。

 残り15分を切ったところで本校はフレッシュなメンバーを2人投入し、ゲームの活性化を図ります。直後には更に2人のメンバーを交代し、スペースを狙った戦術を徹底します。しかし、残り時間を意識して逃げ切りを意識し始めた相手はシンプルなプレーに徹し、リスクを冒しません。後半38分にはメンバーチェンジで時間を稼ぎ、時計を進めます。

 本校は、前線へのフィードを狙いますが、相手も縦への展開を警戒したポジショニングで跳ね返し、ボールが運べません。ついにアディショナルタイムを迎え、運営本部から2分がコールされました。

 本校選手たちは、一矢を報いるべく最後までバイタルエリアにボールを送ろうと試みますが、最後まで相手の牙城を崩し切れず、0-1で無念のホイッスルを聴くこととなりました。

 新人戦に続いて雨の中死闘を演じた両チームのイレブンたち。残念ながら今回は相手に押し切られる形での敗戦となりましたが、テクニックやボディーサイズでは劣るものの、集中力や組織力、闘志や献身性などの点でははるかに本校選手の方が勝っていました。だからこそ拮抗した試合展開に持ち込めたのであり、スポーツの本質として最も大切な部分をしっかりと体現してくれました。特に今大会では新人戦の頃に比べ、空中戦での勝率や全体のスプリント数、セカンドボールの回収率などは格段に良くなっていました。走力に加え、ボールを見る力、展開を読む力がついてきた証であると感じました。

 残念ながら、本校のインターハイは終わりを告げましたが、9月には高校生最大の大会である選手権大会があります。また、それまでの期間には1部昇格を目指すリーグ戦もあります。部員たちには、今大会で得られた課題や反省に目を向けつつも、気持ちを切り替えて更なる高みを目指してほしいと願います。

 また、夏に向けてチームは一旦リセットされることになります。今回ピッチに立つことができなかった選手たちも、ベンチや応援に甘んじることなく、公式戦のピッチに立つことを目指して切磋琢磨してほしいと願います。そうしたし烈なポジション争いがチームの成長を加速していくのです。選手権ではチーム全員でリベンジを果たして必ずや2次予選の切符を手にしましょう。

 本日は、雨の中、しかも連休最終日にもかかわらず大勢の保護者の皆さまにご来場いただきますとともに、ピッチサイドから熱いご声援を賜り、心より感謝申し上げます。残念ながら勝利を手にすることはできませんでしたが、ご覧いただきましたとおり、選手たちは全力を出し切って戦うことができました。今後は、個々人のスキルアップと更なるチーム戦術の熟成を目指して鍛錬を積んでくれることだと思います。そして、9月には皆さまとともに喜びを分かち合える日が来ることを楽しみにしたいと思います。今後とも、変らぬご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 頑張れ、越南生!頑張れ、サッカー部!